ねこの日々 - ブログ版

趣味のフルートのことや愛猫のことを、たま〜に呟きます。

入院

日頃愛用の腕時計を入院させた。
昨日今日と二日連続で、朝着ける時に4,50分遅れていたのだ。これまで、電池切れ以外の理由で遅れたことなど無かったのに。先日電池を換えたばかりだし、特に変わった事をした覚えもないし、二日連続ということは偶然ではなさそうだし、とうとうメカにガタが来たかと覚悟して時計屋さんに相談。

店員さん、電池の電圧を測って「電圧は問題がないので、機械ですねー」と教えてくれた。オーバーホールなので、代わりの時計を買えるような修理費だったけれど、迷うことなくお願いした。ついでに、頭が欠けすぎて原型を留めていない様のりゅうずの交換も。


大切な時計なのだ。高校の合格発表を確認し、中学へ立ち寄って報告した足で、行き先も告げられずに両親に連れて行かれた街の時計屋さん。そんなお店に入るのは生まれて初めてで、何が起こっているのかが分からずに目を白黒させている私を、両親はショーケースのあるコーナーへ連れて行き「好きなのを選びなさい」と言ったのだ。

「好きなの」って言ったって、並んでいる腕時計についている値札は5桁の数字で、「お買い得」札の付いた2000円位の服を買ってもらうのにも「高いよなー」なんて思っていた私は、そんなお買物は中学生には不相応だと思って、ケースの前で固まってしまった。

親が失笑しつつ「ほら」と勧めてくれて、やっと並んでいる時計がちゃんと見えるようになった。なんだか良く分からないけれど、これは選んだ方が良さそうだと思い、お店の人や親の意見も聞きながら一生懸命選んだ。それまで自分の時計を持っておらず、高校からは電車通学になる私には必需品であった。だけど、何もそんな高いのを買う必要もないよーと選びながら思ったりもしたのだった。

その時はびっくりしていて気付かなかったし、親も言わなかったし、それからしばらくは考えもしなかったので、実は気付いたのが割りと最近のことなのだけれど、その時計は親から私への合格祝だったのだ。親からお祝いの品を頂くなんて考えてもいなかった私は、そんなにも喜んでくれていたのかと今更気付いて、ありがたくて涙が出るのだ。自分自身は、入試は通過儀式程度の感覚だったので、お祝いされるようなことだとは認識していなかったのだ。しかし、事情があったとはいえ義務教育で終えた両親にとって、子供が高校へ行くということがとてもとても嬉しかったのだろうと思う。そんな両親の想いを想像すると、勿体無さと複雑な気持ちで涙が出て来る。


その後の私の人生は、その腕時計と共にある。学生時代に誤って洗濯し、柔軟材までかけてしまって時計屋さんへ駆け込み、無事に復活した時は本当に嬉しかったし、それ以外にも、色んな思い出のある時計なのだ。受験中に止まってしまったことも。

思い出だけではなくて、時々立ち寄る実家で、親が何気なく私の腕時計を見ては喜んでいるような雰囲気を感じると、親孝行しているような錯覚がして私も嬉しくなるのだ。


ということで、無事に元気になって戻っておいで。