ねこの日々 - ブログ版

趣味のフルートのことや愛猫のことを、たま〜に呟きます。

プラスティック製の硯

 何気なく近所のショッピングセンターを歩いていたら、文具品売り場に、学童向けの書道セットが積まれていた。メッシュ状のバッグで変わっているなあと興味が湧いて眺めたら、うち一つが開いて、中を見られるようになっていたので手にとって見てみた。
 随分と軽いというのが最初の印象。下敷きの薄さに驚きつつ、セットになっている品を見て物凄く違和感があり、その原因を探ったら、硯だった。
 硯がプラスティック製だったのだ。硯石の持つ独特の重量感と質感の好きな私から見ると許せないほどにチャチにも感じる。もちろん、とても軽くて、これでは墨を擦れないな、墨汁使用専用かなと思ったのだけれど、よく見ると墨がセットになっていることに気付いた。
 思わず「え、これ、墨擦れるの?」と口に出してしまった。表面はザラザラさせてあるので、確かに擦れそうではあるのだけれど。
 墨をするのって、見た目滑らかな硯と墨を穏やかにこすり合わせているうちに、立ち上る独特の香りと共に墨の色が濃くなるのを眺めるのが楽しいのだと思っている私には、ザラザラな表面のもので墨を擦るなんてという気分だ。これだったら、学校の授業では、墨の擦り方を机上でレクチャーして、実際には時間の都合で難しいからと墨汁を使うようにする方がずっとマシだと思う。墨を望む状態に擦りあげるには時間が掛かるということも知っておくべきだと思う。
 子供の頃、書道のセットは重くて取り立てて持ち歩きたいと思えない荷物の一つだったので、軽いのが好ましいことは判るのだけれど、あの重さは理由のある重さだったのだということに改めて気付いた。
 「これは使いたくないなあ」と呟く私に、ダンナが「今更書道セットをどうするの?」と不思議そうに尋ねた。愛用していた書道セットが家のどこかにあるはずなんだけどなあ。久しぶりに墨を擦ってみたくなった。