ねこの日々 - ブログ版

趣味のフルートのことや愛猫のことを、たま〜に呟きます。

百年の恋 (篠田節子)

久し振りに本の覚書などを。

篠田節子さんの「百年の恋」をリサイクル本屋さんで偶然見つけたので、嬉々として購入して先日読み終えました。
このお話を知ったのはNHKのドラマ(http://www.nhk.or.jp/drama/archives/100nen/)だったのですが、なかなか原作を見つけられなかったのです。近所には朝日文庫を扱っている本屋がなかったし、取り扱っていてもこの本が無くて、がっかりして棚の前から立ち去ったりしていたのでした。

主夫(とはいってもフリーライターで在宅仕事メイン)と仕事も収入もバリバリのキャリアウーマンのカップルのお話。嘘のように結婚して、妊娠、出産。女性の家事能力の低さはお約束・・・なのでしょうか。一方で、主人公である男性は、女性のキャリアに嫉妬もします。

出産後、子の面倒は夫が見ていきます。子を連れて打合せに出たりもします。その時の周囲の反応など、非常に現実感があります。子育て日記が時々出てくる(主人公である主夫さんの連載という形で)のですが、その部分については、篠田さんのライター仲間の青山智樹氏の実際の日記ということもあり、この物語に添える現実味を増しています。

この物語の怖いところは、主夫+働く女性だからこそ、つい同情したくなることがある、ということで、これが主婦+働く男性だったら、主人公(在宅側)の辛さは「あたりまえのことでしょ、何言ってるの」と切って捨てられそうなことだということです。

もちろん、出産もお乳も男性にはどうにもならないなんて性差はありますが、それ以外の「人間として」の部分については、性差云々はない、はずなんですよね。

男性だから、女性だからという視点の痛さを感じる本です。その意味で、非常に面白い物語です。

働くことに煮詰まってしまったら、読んでみてはいかがでしょうか。男女問わずです。