ねこの日々 - ブログ版

趣味のフルートのことや愛猫のことを、たま〜に呟きます。

巣立ち

 もう二週間ほど前のこと。ある日出勤すると、玄関先を掃除している人がいる。珍しいな、何事?と思ってよく見ると、傍らにある空き箱の中に動くものが。職場の玄関傍にあったツバメの巣が見事に崩壊し、雛4羽と共に落ちてしまっていたのだ。周りを見渡すと、近くの電線付近で親つばめ2羽がウロウロとしている。雛たちはまるまるしい体つきながらも色は黒くなっていて、声変わりの頃の少年のような雰囲気だった。

 いつのまにか、誰かが巣のあった近くに背の高い脚立を立てて、その上に菓子の空き缶の中にシュレッダーくずと壊れた巣の一部と雛を入れて置いていた。親鳥はまだ、近くで落ち着き無く飛んだり電線に止まったりしていた。果たして、親鳥がまた来てくれるだろうかと、それだけを皆心配していた。

 それから数時間後。空き缶の中に親鳥も入っているのを何人もの人が確認した。ちゃんと認識してくれたねと、皆で喜んだ。

 それからしばらくして外に出た時、脚立が消えていた。果たして巣はどうした?とキョロキョロしていたら、傍にいた人が「あそこ」と指差して教えてくれた所には、誰かがこしらえた、カップめんのカップで出来た巣があった。窓の柵の上の方に、上手い具合に収まっている。移動したことも親ツバメ達はちゃんと分かっていたみたいだった。

 その後、そこを通るたびに、皆が巣を見上げた。雛たちもずうずうしくなって、普通人の気配を感じると巣の中に引っ込むものなのに、巣のふちに顔を乗せたまま眠っているヤツも出てきた。暗くなると、親ツバメの尻尾が出ている様子も見えた。

 そうやって覗いていたけれど、それから一週間ほど経った頃、気配を感じられなくなった。それでもしばらく、巣はそのまま置いていたけれど、とうとうある日、片付けている人たちがいた。中を覗いたら、空っぽでしたよー、と。片付けてくれている人の顔も、安堵と寂しさの入り混じった顔だった。

 来年もまた来てくれるかな。無事に生きていって欲しいなあ。