ねこの日々 - ブログ版

趣味のフルートのことや愛猫のことを、たま〜に呟きます。

バレエ漬け(草刈民代)/幻冬舎文庫

2009年4月24日を最後に現役バレリーナを引退した草刈民代さんの自著です。
子供の頃、現役でバリバリと踊っていた頃、バレエのこと、日常のこと、「Shall we ダンス?」にまつわること、夫・周防さんのことや周防さんとのやりとりなど、思い浮かんだことを思いついたように書いているように感じられる本です。そして、草刈さんはこの本を書くことを通して、自問自答し、どうして自分が踊っているのかを確認しているようでもあります。
2006年3月に刊行されたものを2009年4月10日付で文庫化したという経緯により、「あとがき」と、「文庫版あとがき」がありますが、どちらも「あとがき」という名の一つの章のようです。この2つの間には3年の時間が経っていますが、「あとがき」では本文を書いた日々を思い返しつつダンサーとしての自分を再確認しているのに対し、「文庫版あとがき」では引退とその後の自分を視野に入れている様子がありありと書かれています。そして、文庫版の発刊されたその月に引退するのです。

職業バレエダンサーの地位が確立されているロシアやヨーロッパとは異なり、日本ではおけいこごとの延長線にあるバレエダンサーという立場の不安定さの辛さを、実感と共に書いている件もあります。バレエ学校があるわけではないし、収入の面での不安定さもあります。草刈さんが若いころは給与制のバレエ団はなかったので出演しただけのギャラを貰い、チケットは出演する自分(や家族)も売っていたとのこと。出演者自らチケットを売るなんて、お稽古ごとや趣味と変わらないですよね…。一方でバレリーナとしての日本における評価では「環境に恵まれている」の言葉で片付けられてしまい、自分の努力を見てもらえていないと感じる評価をされることも数多くあったそうです。この「環境」で片付けられている言葉こそまさしく「趣味の延長線上」と認識されていることを示しているように思います。
幼少からの訓練が必要なのに、専門家を育てるための学校もなく、しかし、日本中に数多くバレエ団が存在するという状況に、海外の人は首をかしげるそうです。それでも、草刈さんが海外ではなく日本でのダンサーとしてあり続けた理由ははっきりとは書かれていません。しかし、自覚・無自覚はわかりませんが、何らかの信念に基づいているのだろうということは、本文の最後の2つの文章から伺えます。

大切なのは、自分の信念。
自分にとって、大切なものを探そうとする意志なのではないかと思う。

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