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ねこの日々 - ブログ版

趣味のフルートのことや愛猫のことを、たま〜に呟きます。

仮死で生まれたネコだった。
母猫の飼い主の適切な処置が効奏してとどまった命だった。

そのためか、お乳で育っている頃は、一緒に生まれた他3匹と比べるとずっと身体が小さかった。小さくて、ちょっとだけ臆病だったのか、オスの兄弟の動きをくりくりとして好奇心旺盛な目で、興味深そうに観察しているような猫だった。

そうして、生まれて3カ月とちょっとした頃、兄弟猫のメスと共に我が家へやってきた。
その頃には離乳していたのだけれど、離乳後カリカリを食べるようになると見違えるように身体が大きくなって、我が家へ来た頃には兄弟の中で一番身体が大きくなっていた。肥っているのではなくて、骨格から大きい猫となった。

そして、カリカリの大好きな猫だった。猫は、これで命が永らえたと思った食べ物が好物になるらしいと聞いたことがあるのだけれど、そうなのだとしたら、カリカリで自分は助かったと思ったのではないかというほど、缶詰よりもカリカリの好きな、ちょっと変わった好みだった。そして、好き嫌いはしなくて、どの種類のカリカリでも食べた。その点では、とても育てやすい猫だった。

生まれた瞬間から人と暮らし、完全室内飼いとしたためか、自分の周りにいる生き物はお友達……は言いすぎとしても、敵意のないイキモノだと思っていたのか、時折訪れるお客様にも頭をこすりつけ、傍に座り、ついにはお腹を見せて寝転がったりもしていた。

身体はどんどん大きくなり、体重が11kgを超えた時期もあった。体重だけを聞くとデブ猫のようだけれど、とにかく骨格が大きくて、確かに太目ではあったけれど、決してデブ猫という感じてはない体型だった。身体が大きいからか、力も結構あって、検査で採血する時は、一人が後足を押さえ、一人が身体を押さえ、一人が前足を押さえ、そして一人が採血という、猫では考えられないような人員を要した。しかし、おおらかな猫で、ワクチン注射では、針を刺されたら、耳をちょっと倒しただけであっさりと終わり、先生が思わず笑ってしまうなんてこともあった。ペットホテルもやっている病院で、ホテルステイは比較的良く利用していたこともあるけれど、診察室でもマイペースで、診察台の上はちょっと厭みたいだったけど、それ以外の場所はご機嫌で散歩しているような猫だった。ホテルステイ中は、結構自由にウロウロさせてもらったりもしていたようで、お気に入りの場所でくつろいでいる猫を見た知人に「病院でくつろぐ猫」と驚かれたりもしていたようだ。

とにもかくにも、マイペースな気性の穏やかな猫だった。敵意がなければ自分よりもずっと身体の大きい犬でも平気だった。傍で唸る猫がいたら、キミのことは全然気づいていないんだもんねと言わんばかりに無視してやり過ごしていた。その猫には背を向けて、全く違う方向を見つめ、それでもしつこく唸っていたら、スッと移動してしまっていた。自分の身体が大きいことを自覚していたのか、それとも、大きいから周りが少々及び腰だったのかは分からないけれど、自分から攻撃することはまずなかった。

そんな猫だったけれど、兄弟猫のメスとは時折喧嘩した。通りすがりに、ちょっかいを出されたりすると、多くはやり過ごしていたけれど、時々喧嘩を買っていた。喧嘩を買った時も、ほとんどは鳴くこともなく威嚇してメスを固まらせていたけれど、稀に取っ組み合いをして、毛を飛び散らせていた。メスも体格差を活かして、文字通りオスの懐に飛び込んで本気で喧嘩をしていた。お互いに傷を負ったりもしていた。そして、しばらくすると、仲良くひっついて眠っていたりした。病院のスタッフの話を聞くと、他の動物と喧嘩をしたことはなかったようで、喧嘩の話をすると驚かれた。この猫が喧嘩をした唯一の相手がメスだったわけだけれど、兄弟であるメスは気を許せる唯一の相手だったのかも知れない。だからこそ、喧嘩を出来たのかも知れない。

また、この猫はおしゃべり猫だった。呼べば返事をするし、声を掛けても返事をするし、何かあれば鳴いて教えてくれる猫だった。なんとなく時間を持て余した時、この猫を相手に、テキトーな会話のようなことをしていた。お湯を沸かしていることを私が忘れていた時、台所から鳴きながら私の傍にやってきて必死に訴えるのを見て思い出したこともあった。私が台所へ向かったら鳴きやんだ、なんてことも。

先に書いたように、身体が大きくて重い猫だったけれど、甘えん坊で、特に私のことが大好きだった。子猫の頃は、背を向ければ背中に飛び乗っておんぶされ、隙を見て飛び乗っては抱っこされたがった。抱っこもおんぶも大人になってからもされたがった。おんぶをしたら、肩に顎を乗せ、後ろ手に回して猫のお尻をのせる私の手は私の腰位置にあった。それでも聞き分けはそれなりによくて、とても忙しい時に、抱っこしてとひっついてきた時には、「じゃあ10数える間だけよ」と言い聞かせてから10数え、「おしまい」と降ろすと、それなりに残念そうにしつつも、しょうがないなあと言う雰囲気でそこから去っていったりもしていた。言葉での言い聞かせがかなり通じていたので、猫の形をした猫ではないイキモノを相手にしている感覚が強かった。

私があおむけで寝ていると、嬉しそうにお腹の上に乗ってきてくつろいでいた。乗られる瞬間はとても重くて辛いのだけれど、香箱座りをされると重さはそんなに気にならなかった。ふと目が覚めたら、目の前に満足そうな顔があって思わず笑ってしまったこともあった。幸せな重さだった。
乗らないまでも、身体のどこかを私につけて眠っていることは多かった。
私が座イスで膝を立てて座っていたら、私のお腹にお尻を置くような姿勢で私と同じ方向を見るように座ってくつろいでいた。
とにかく、私にひっついているのが大好きだった。私もひっつかれているのがとても幸せだった。


不意に涙がボロボロ出てきたので、本日はこれまで。