ねこの日々 - ブログ版

趣味のフルートのことや愛猫のことを、たま〜に呟きます。

3つのロマンス(シューマン)からの覚書

 これは思い浮かんだことを書き留めた私的感想メモです。なんら正当な解析や分析を行っていません。

 シューマンの「3つのロマンス」(op.94)という3楽章から成る曲のピアノとフルートによる演奏が好きで、偶然今車で掛けているCDに入っていて耳にする機会が多く、ぼんやりとあれこれ想像したので書き留めてみる。この曲の原曲はオーボエ&ピアノなのだそうだが、私はその編成による演奏を聴いたことが無い。
 「3つの」とついていることから、エピソードが3つあるという解釈をするのだが、3曲のうちの1楽章と3楽章の2曲は陰鬱さが覆いかぶさっている。「ロマンス」という言葉の響きに甘さを感じていた私にとっては、衝撃的な曲想でもあった。
 第1楽章は恋焦がれるというよりも憧れから発展した気持ちのように感じられる旋律で、第1楽章全般を通してこの曲想は変わらない。憧れ恋しいけれどもどうしたらよいのか分からないような、そもそも初めから相手と対等な立場には無いという諦めさえも感じられる。浮き足立つようなリズムが中ほどでごくわずかに登場するが、その印象は薄い。
 2楽章については、冒頭と終わりの甘い幸せなメロディをどこかで耳にされている方も多いと思う。その甘いメロディの間に挟まる、戦慄と荒々しさのある旋律は、堪え切れない想いなのか嫉妬なのか思うように行かない苛立ちなのか。流れた瞬間にハッとし一体何が起きたのかと思わんばかりの情景が流れるのに、それが引いて続けて流れる、冒頭と同じメロディは、その混沌とした種々の感情さえ流し、忘れさせてしまうのだ。
 同じフレーズに戻ったあとの情景は、荒れた二人の関係が、あるいは主人公の心情が元に戻ったということなのか、それとも破局後の静穏なのか。最後のエコーはかつての甘い記憶を懐かしんでいるかのようにも感じられる。
 3楽章は、主人公自身が戸惑い、迷っているような旋律から始まる。誰かへの想いを持て余しているような、いやむしろ、その想いが何であるかを認識できていないかのようでもある。そこから少しずつ、いつの間にか穏やで安心感のある旋律へと移行する。この人と一緒にいるとホッとして、ほんわかと幸せな気持ちになるという気持ちを表しているかのようだ。しかしながら、ところどころに不安を想起させるものも混じっていて、何か不安定なものの上に立っているようなイメージすらある。
 そして幸せな時間は瞬く間に過ぎる。そして3楽章冒頭の不安の立ちこめるメロディへと戻る。淡い気持ちは伝わらなかったのかもしれない。主人公は、その想いが何であるかを掴めなかったのかもしれない。あるいは、初めから叶わぬことを予感していたのかもしれない。

 シューマン自身のロマンスもややこしいものを含むようだ。自分自身の気持ちの整理のための曲だったのだろうか。

【参考サイト】