植村泰一の「音楽伝統継承講座 vol. 2」
「植村泰一の音楽伝統継承講座VOL.2〜私には正しい音楽の伝統を伝える責任がある〜」に参加してきた。今回のテーマは、「ゴーベールとアンデルセンを題材にして、実践してみよう!」だった。植村先生の音を聞きに行くことを一番の目的として、いそいそと会場へ向かった。
以下は、そのメモです。
「フレンチスタイルとは」というのが前回今回の講座の真のテーマだ。
現在のフルートはベーム式フルートと言って本体と足部管の部分が円筒形だけれども、ベーム式をベームが開発する前は、本体から足部管に掛けてすぼまる円錐形のフルートが主流だった。ベームはドイツの人だったのだけれど、当時のドイツではベーム式フルートが全く受け入れられず、最初に取り入れたのがフランスだったという経緯がある。
では、ベーム式フルートを用いればフレンチスタイルであるかと言うと、それはNOだ。フレンチスタイルとは楽器に依存するものではない。フレンチスタイルは音色の変化に重きを置いた演奏スタイルのことだ。とある二色の間には無限の中間色があるのと同じイメージで無限の音質が存在するというイメージが大切だ。
ゴーベールと言えば、フルートを吹いている者には「タファネル・ゴーベール」(これはタファネル氏とゴーベール氏を差す。両者は師弟関係にある)として、有名なエチュードを作っている。そのため「タファネル・ゴーベール」というと、そのままエチュードを示す。そのエチュードは、ピアノのハノンに似ている(と私は感じている)。
アンデルセンも、エチュードの代名詞のようになっている。「タファネル・ゴーベール」とは異なり、曲集のイメージを持つエチュードだ。op.15のNo.3は「フルートのショパン」とも言われたそうだ。とはいえ、エチュード以外の曲が分からない。実際、エチュード以外の作品の詳細については不明だそうで、最近「サロン的な小品」という曲が復刻されたという程度のようだ。コペンハーゲンで生まれ亡くなったとのことだが、童話のアンデルセンとは無関係とのこと。
心に残った言葉のメモ。
ソノリテの練習では
- ソノリテのHからの半音下降形では、中音Esからディミニエンドをかけていく。中音DからCisへの移行では更に注意を払うこと。Dはp(ピアノ)、Cisはpp(ピアニッシモ)で吹くようなイメージで。
- ソノリテの練習では求める音をイメージしてから始める。角張った音によるソノリテもあれば優しく静かな音の場合もある。肝心なのは音質を最初から最後まで統一すること。
タファネル・ゴーベールの練習では
- メトロノームを十六分音符の速さに合わせて、それにピッタリ合わせること。
- 吹けないテンポでは吹かないこと。
- 一日の練習の大半がソノリテやタファネル・ゴーベールに費やされるだろう。
その他
- 吹けるテンポとは、指が回るテンポではない。ニュアンスを付けられる、ソルフェージュを出来るテンポのことである。
- アクセントとは、記号を見ての通り「急速なディミニエンド」である(ここからイメージを膨らませる)。
- 大切なのは音符ではなくて楽譜。音楽的な興味を失わないように。
植村先生の演奏は、特に静かな音(ピアノ、ピアニッシモ)が素敵だ。同時に、音量に依らず色んな音色がある。先ほどまで、穏やかな熟成したオトナの音だったのに、別の曲では、瑞々しい若い女性のような音色に変わった時には本当に驚いた。あたり一面がバラ色に変わったのだ。
良い目標を頂いた。また明日から頑張ろう。